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2022.10.14

鉄人ジュニア・陳建太郎シェフ(四川飯店)が語る健康秘話「美味しいものを長くずっと食べるために」

シェフ/陳建太郎

シェフ/陳建太郎

1958年に創業者である陳建民氏が、西新橋に1号店をオープン。テレビ番組『料理の鉄人』でも有名な二代目オーナーシェフの陳建一氏とともに、日本に四川料理を根づかせ、広めてきたのが「四川飯店」です。現在では建一氏の息子・陳建太郎氏が三代目オーナーシェフを務めています。建太郎氏がシェフを志すまでや、健康に良いと言われる四川料理について伺いました。(聞き手・酒井明子)

運命を変えた父と坂井シェフとの抱擁

生まれたときから料理人である祖父・建民氏、父・建一氏とともに過ごしてきた陳建太郎氏。祖父は建太郎氏が幼少の頃、自宅に友人を招くことが頻繁にあったそうです。友人の持ってきた鯉を建民氏がその場で調理し、大きな円卓を囲んでみんなで食べる。祖父の友人という知らない大人たちとわいわいと食事をすることが、幼い建太郎氏にとって非常に楽しみな時間だったそうです。

食べることが好きな人に囲まれ、自然と料理人になりたいと思うようになった建太郎氏ですが、最初に興味を持ったのは意外にも洋食でした。

「私が中学生の頃にテレビ番組『料理の鉄人』が始まり、父も出演していました。父とフレンチの鉄人・坂井宏行シェフは仲が良いのでお会いしたことがあったのですが、私は坂井シェフの人柄も料理も大好きで。それでフレンチの世界に憧れを抱きました」
父が四川料理のシェフであるにもかかわらず、学生時代はイタリア料理のお店で5年ほどアルバイトをしました。しかし両親から反対されることはなかったそうです。そのような中、転機となったのは『料理の鉄人』の最終回でした。

「最後の聖戦で父と坂井シェフが対戦しました。結果は坂井シェフの勝利でしたが、仲の良いふたりが戦い、最後に抱き合った姿が非常に感動的で…。それを見て、自分は祖父や父が作り続けてきた四川料理が大好きだったことを認識し、四川飯店で今すぐにでも働きたい!と思ったんです」

祖父や父など家族との思い出は常に料理とともにあるという。

今の自分をつくった2年半の四川修行

四川料理を志した建太郎氏は、大学を中退して四川飯店で働き出すことになりました。陳家の三代目、そして鉄人ジュニアというプレッシャーを感じながら修行を続けていたときに、父・建一氏が大病を患いました。

「このときに自分のルーツというものを初めて意識したんです。それまで私は、四川に一度行ったことがあるだけでした。父は病気を克服しましたが、そのときにこのまま自分が三代目になったら、四川料理のルーツを知らないまま店を継ぐことになる…と。父が元気なうちに、なんとしても四川で本場の料理を学ばなければという気持ちが強くなりました」

四川では2年半、昼は大学に通いながら、夜はレストランで働く生活を続けました。当地では師匠と呼べる中国人シェフに出会い、たくさんの仲間も増えたそうです。そして四川料理についての理解も深めました。

「医食同源」、「美容と健康に良い」などと巷間伝わる四川料理。17世紀以降、四川には外部からの移住者が増加。そのときに各地の料理が四川に伝わり発展、レパートリーが増えていきました。

「四川省は山に囲まれた自然豊かな場所で、キレイな水、盛んな塩造り、山椒が育ちやすい環境があり、美味しい食材が豊富なんです。医食同源の考えが浸透しており、多くの香辛料を組み合わせた料理は、健康に良いと言われています」

建太郎氏によると、四川省では夜中に火鍋を食べに行くことも多いそうです。日本では「夜中に鍋…」とためらいがちですが、香辛料たっぷりの火鍋は、美容や健康増進にも効果的だそうです。

楽しく美味しく食べ続けられるよう努力

「おいしく食べること」と学生時代から続けている趣味のゴルフが健康維持の秘訣と建太郎シェフ。

三代目オーナーシェフとして忙しい日々を過ごす建太郎氏ですが、毎日の食生活については意外にも奥様に任せっきりといいます。

「妻が料理上手なため、私は自宅ではほとんど調理はしません。妻は私の健康にとても気をつけてくれています。忙しい朝は白湯やフルーツを出してくれたり、夜もバランスのいい食事を心がけてくれたり。妻をはじめとして、周囲の人が私の健康を管理してくれていて感謝ですね」

自分だけだと食生活が偏りがちになってしまうという建太郎氏ですが、それでもコロナ禍になり少し変化があったそうです。

「新型コロナウイルスの影響で休業した際、自分の健康についてしっかりと考える時間があり、そこでファスティングに挑戦してみました。9日間、酵素ドリンクなどを摂りつつ行ったのですが、これにより体質が改善。腸内環境が改善され、目覚めや寝つきも良くなりました」

これ以来、意識が変わり、好きなものをドカ食いするのではなく、バランスの良い食事を細く長く続けていこうと思えるようになったそうです。とにかく食べることが大好きな建太郎氏。「食べられないと体も心もダメになってしまう」との思いの下、ずっと楽しく食べ続けられるように健康維持をしていきたいそうです。

Text/Akiko Sakai Photos/Kazuya Furaku

レストランデータ

店名/四川飯店 赤坂(公式サイト
住所/東京都千代田区平河町2-5-5 全国旅館会館5F・6F
Tel/03-3263-9371
営業時間/ランチ・11:30~15:00(LO 14:00)、ディナー・17:00~22:00(LO 21:00)
定休日/毎週月曜日、年末年始(12/28~1/4)

四川飯店名物の「陳麻婆豆腐」(2000円)は祖父から受け継がれてきた伝統の味。

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シェフ/陳建太郎

シェフ

陳建太郎

1979年、東京生まれ。日本に四川料理を広めた四川料理の父・陳建民を祖父に、中華の鉄人・陳建一を父に持つ。「赤坂 四川飯店」に入社後、2005年に四川省成都市の「菜根香」にて、本場の四川料理を学ぶ。帰国後は「赤坂 四川飯店」に勤務する傍ら、「四川飯店」三代目として、メディアやイベント出演など幅広く活動している。2014年、シンガポールに初の海外店舗 「Shisen Hanten by Chen Kentaro」を出店。2016年から連続で、シンガポール版ミシュランガイド2つ星を獲得。

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