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2022.11.11

“辛いは旨い”の秘密…。日本に裾野を広げた一皿。陳建太郎シェフが受け継ぐ創業から伝わる「麻婆豆腐」

シェフ/陳建太郎

シェフ/陳建太郎

1958年に西新橋に1号店をオープンし、現在は三代目の陳建太郎氏がオーナーシェフを務める「四川飯店」。ここで創業者の陳建民氏の時代から作られ続けているのが、「四川飯店伝統の…」と紹介される「陳麻婆豆腐」です。長年、愛されてきたお店自慢の一皿がたどってきた歴史とは…建太郎氏に伺いました。(聞き手・酒井明子)

四川料理に欠かせない唐辛子や山椒(花山椒)。辛味と香りが食欲を増す。

父から伝授はなし!? 作りながら覚えた代々の味

現在では中華料理として知らない人がいないといってもよいメジャーな「麻婆豆腐」ですが、日本でその裾野を広げたのが「四川飯店」の創業者の建民氏でした。今ではお店の看板メニューでもあり、日本だけでなく海外にも麻婆豆腐専門店を展開しています。孫の建太郎氏がこう語ります。

「祖父の代から続き、父(陳建一氏)、そして私へと受け継がれているメニューですが、実は父にレシピを教わったことはありません。最初の頃は父が作っているところを見て、見様見真似で練習。作りながら覚えていくという感じで、徐々に店の味に近づいていきました」
現在でも材料は細かく測らず分量は経験則のため、祖父や父の作る麻婆豆腐とはもちろん、日や店によっても細かな味の違いがあるそうです。でも、建太郎氏は「必ずしもきちんと同じ味である必要はなく、それも個性と考えます。むしろ個性があるからこそいい。それぞれの味わいをお客様にも楽しんでほしい」と話していました。

奥深い味わいを実現する8つの要素

真っ赤な見た目もあり、辛さばかりをイメージしがちな麻婆豆腐ですが、四川飯店の一皿にはしっかりと旨みが凝縮されているため、辛いものが苦手な人もすいすいと食べ進められます。そうした旨味の秘密は、味に関する8つの要素でしっかりと構成されていることに理由があります。その8つとは? 建太郎氏がノートに書きながら説明してくれました。
「痺れの“麻(マー)”、辛みの“辣(ラー)”、熱い食感の“燙(タン)”、味が食材に絡みつく“捆(クン)”、そぼろなどさくさくした食感の“酥(スー)”、新鮮な豆腐の“鮮(シェン)”、ねっとりした食感の“嫩(ネン)”、スパイスの香り“香(シャン)”です。これが麻婆豆腐、ひいては中華料理全般の旨さの源になります。これらを実現するためには食材選びやその調理方法など、さまざまなことにこだわる必要があります」

主役とも言える木綿豆腐は少し柔らかさがあり香りの強いものを、“頑固な職人さん”が作る豆腐店から仕入れています。この豆腐はソースの絡み方が抜群なんだとか。また、味の決め手となるピーシェン豆板醤や山椒(花山椒)などの調味料や香辛料は、四川省のものを使用します。

「祖父から教えられた水がキレイな四川省で作られたものを使いたい」と、建太郎氏は毎年、現地を訪れています。

味の決め手となる豆板醤など調味料は四川省に足を運び、シェフ自身が選んでいる。

日によって調味料、香辛料を微調整

素材も大切ですが、もうひとつ柱となるのが調理の工程です。

「例えば豆腐は水分の多い食材なので、切った瞬間から旨みが出ていきます。だから鍋に入れる直前に切るようにします。そうすることで大豆の香りや食感、旨みを損なうことなくお客様に届けることができるんです。いつ切る、いつ入れる、いつ炒めるといった調理をする際の工程はひとつひとつに意味があり、それが味を決めるので非常に大切です」

炒め方、調味料のタイミング、火の入れ方…どれかひとつを間違うだけでも、香りが損なわれたり、“酥”のさくさくした食感が出なくなってしまう原因になります。また日によって豆腐をはじめ、食材や調味料の状態も若干異なると語り、それらの状態に合わせて、味つけを微調整しているそうです。
建太郎氏によると四川飯店の麻婆豆腐が半世紀以上にわたって受け継がれてきたのは、祖父や父はもちろん、OBを含めたスタッフやお客様など皆の力だといいます。大衆料理と言われる料理ですが、そこには歴史や想い、魂がつまっています。建太郎氏自身も一番好きな料理である麻婆豆腐。「これからも味を変えることなく、日本だけでなく世界にさらに裾野を広げていきたいです」と夢を口にしています。四川飯店は2014年にはシンガポールに出店し、海外進出を果たしました。麻婆豆腐は陳家の台所を飛び出し、世界へと広まっています。

Text/Akiko Sakai Photos/Kazuya Furaku

レストランデータ

店名/四川飯店 赤坂(公式サイト
住所/東京都千代田区平河町2-5-5 全国旅館会館5F・6F
Tel/03-3263-9371
営業時間/ランチ・11:30~15:00(LO 14:00)、ディナー・17:00~22:00(LO 21:00)
定休日/毎週月曜日、年末年始(12/28~1/4)

四川飯店名物の「陳麻婆豆腐」(2000円)は祖父から受け継がれてきた伝統の味。

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シェフ/陳建太郎

シェフ

陳建太郎

1979年、東京生まれ。日本に四川料理を広めた四川料理の父・陳建民を祖父に、中華の鉄人・陳建一を父に持つ。「赤坂 四川飯店」に入社後、2005年に四川省成都市の「菜根香」にて、本場の四川料理を学ぶ。帰国後は「赤坂 四川飯店」に勤務する傍ら、「四川飯店」三代目として、メディアやイベント出演など幅広く活動している。2014年、シンガポールに初の海外店舗 「Shisen Hanten by Chen Kentaro」を出店。2016年から連続で、シンガポール版ミシュランガイド2つ星を獲得。

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