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2022.07.01

下町・浅草駒形のフランス料理店「ナベノイズム」の"イズム"とは? 渡辺雄一郎シェフ「浅草駒形名物のフランス料理に」【ウェルビーイングChefs】

シェフ/渡辺雄一郎

シェフ/渡辺雄一郎

東京・浅草駒形の隅田川沿いに佇む、一軒家のフランス料理店「ナベノイズム」。名店「ジョエル・ロブション」で3ツ星を9年間維持し、数々の賞を受賞した一流シェフ・渡辺雄一郎氏により、6年前にオープンしました。作り手の愛を何よりも大切にするエグゼクティブシェフCEOの渡辺氏が育ててきた、「ナベノイズム」の"イズム"とはどのようなものなのか、迫っていきます。(聞き手・酒井明子)

隅田川とスカイツリーを望む非日常空間

2022年7月に開店から6周年を迎えたフランス料理店「ナベノイズム」は、21年間勤めたロブション・グループを勇退した渡辺シェフが、東京・浅草駒形にオープンしたレストランです。

隅田川沿いにある一軒家レストランを入ると、まず目に入るのが、ガラス張りのオープンな厨房です。渡辺シェフをはじめスタッフの皆さんが調理する姿を見ることができ、これからの料理に期待が膨らみます。
階段を登り、2Fはテーブル席とテラス席、3Fにはテーブル席に加え、大きな窓に沿ってカウンター席もあります。非日常的空間のこちらから望めるのは、眼前にそびえ立つ東京スカイツリーです。さらに隅田川花火大会の日には、大輪の花火を見ることも。テーブルに目を移せば、「ナベノイズム」のイメージカラーのオレンジと黒の飾り皿(サービスプレート)には、渡辺家の家紋を配したレストランのロゴが刻まれています。

2Fテーブル席。抗菌カーテンで仕切られ、落ち着いて食事を楽しむことができる。

季節や時間によって雰囲気の変わるテラス席。初夏は吹き抜ける風が心地良い。

素晴らしい眺望のお一人様にも対応するカウンター席。

飾り皿は封蝋(ふうろう)をイメージしたデザイン。

開店したその年にミシュラン東京で1ツ星、その2年後にはミシュラン東京で2ツ星を獲得と、順調に歩んできているように見える「ナベノイズム」ですが、実際はどうだったのでしょうか。

「最初の頃はとにかくガムシャラ。48歳までロブション・グループという大船に乗っていて、小舟に乗って漕ぎだしたのは49歳のとき。自信はありましたが、不安もたくさんありました」

「ナベノイズム」の味を浅草駒形名物に

「ただ常に忘れずにいたのは、座右の銘でもある"初心貫徹"と"謙虚であれ"という言葉。すべてのことに感謝ができなくなったら、ダメだと思っています。ナベノイズムがここまで生き延びてこられたのは、本当にお客様のおかげです」

7年目に突入し、「ナベノイズム」の味やブランドは、徐々にお客様に認知されてきています。現在は渡辺シェフ自身も、その味をしっかりと守っていきたいと言う思いが強くあるそうです。そう思わせたきっかけのひとつは、レストランがある場所・浅草駒形という土地にありました。
「浅草駒形という土地は、さまざまなことが長く継承されている場所。例えば200年続いているどぜう屋さん、日本最古の天ぷら屋さんなど、もの作りが長く続く土地柄なのです」

「自分もこの土地に来たからには、それを継承していきたいと思っています。自分の味を長く守り続けて、地元の名物にしたい。"浅草駒形のフランス料理といえばナベノイズム"と言われるまで、頑張りたいですね」

愛情が生み出す家族的な雰囲気

「ナベノイズム」の"イズム"は、そこを訪れるお客様や、働く仲間にも注がれています。

「私は人を楽しませるのが好きで、昔からお調子者なところがありました。現在は料理を通して、お客様が楽しめるように心がけています。食事はリラックスして食べて頂きたいし、楽しんでほしい。この店を皆様の別荘だと思って、リフレッシュして帰ってもらえたら嬉しいですね」
「ナベノイズム」のスタッフは、料理人とサービス担当を合わせても多くはありません。その分、レストランはファミアリアルな雰囲気に包まれています。しかし仲が良いだけでは人は育ちません。日々、愛情があるからこそ、ときには厳しい声をかけることもあると言います。

「家族的な雰囲気ではありますが、師弟関係を甘えにしてはいけないので、指導は厳しくするようにしています。でもそれは、立派な料理人になって欲しいという思いから。愛があるからこそ、いつか良い料理人として送り出したいという気持ちがあります」

「私が考える良い料理人というのは、ただ料理を作るだけではダメで、人に優しくできないと良い料理人にはなれません。人を好きになって、人とコミュニケーションをとること。そうでないと食べる人のことを考えながら、美味しい料理を作ることはできないと思います。口でガミガミと言うよりも、それを私自身が実践をして、スタッフの皆に見せているつもりです」

心地良い空間と日本人の感性が生み出すフランス料理、それがイズム

 渡辺シェフは続けます。

「またレストランにある道具に関して、リスペクトすることも教えています。道具を投げたり乱暴に扱わないこと。忙しい料理屋というと冷蔵庫のドアをバーンと閉めるようなイメージをお持ちの方もいらっしゃるでしょうが、ウチではそういうことは絶対にない。もしやったら、きちんと叱ります」

お客様への愛と雑音のない空間、それらが「ナベノイズム」にいる時間を心地良くさせているのかもしれません。

テキパキと作業が続けられる厨房内には、雑音や騒音は一切ない。

レストランで使用する食材にも、もちろんこだわっています。基本的には渡辺シェフが現地を訪れ、そこでの食べ方や調理法、処理法などを聞いています。日本の地域食材をよく使っていますが、提供されるメニューとしてこだわっているのは、当たり前ですがフランス料理であるということ。

「地域食材は特に無理をして使っているわけではありません。そこに雷おこしがあるから、そこにモナカがあるから、そこに蕎麦粉があるからという感じで、自然に取り入れています」
「友人であるフランス料理のシェフがナベノイズムの料理を食べて、"浅草駒形地方料理"と言ったことがありました。開業当初は『どうしてロブション・グループのようなフランス料理を作らないのか?』と言われたこともありましたが、同じ物を作っても意味がありません」
「大事にしているのは、フランス人が見てフランス料理だと思うこと、そして味わって感じてもらうことです。ずっとフランス料理店で働いていたので、そこにブレはありません。フランス料理は作りますが、そこに地域食材を使って日本人としての表現をする。それが今の私、そしてナベノイズムの武器ですね」

浅草駒形という下町で食べられる、日本人であることを武器にしたフランス料理。地域食材を使いながら今後、フレンチレストランの「ナベノイズム」がどのように進化していくのか、楽しみでなりません。

Text:Akiko Sakai Photos:Miyabi Tanaka, Nabeno-Ism

浅草駒形名物を目指すナベノイズムの料理はどれも繊細で美しい。

レストランデータ

店名/ナベノイズム(Nabeno-Ism 公式サイト
住所/東京都台東区駒形2-1-17
Tel/03-5246-4056
営業時間/ランチ・12:00~15:00クローズ 、ディナー・18:00~22:00クローズ
定休日/月曜日、他不定休あり(要問い合わせ)
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シェフ/渡辺雄一郎

シェフ

渡辺雄一郎

ナベノイズム・エグゼクティブシェフCEO。1967年、千葉県出身。大阪あべの辻調理師専門学校卒業後、同校フランス校シャトー・ド・レクレールに進学。同年秋よりミシュランの2ツ星 クーシュヴェル、サントロペ「ル・シャビシュー」「ラプロポ」にて研修。1988年東京『ル・マエストロ・ポール・ボキューズ・トーキョー』でキャリアをスタート。数々の修行を経て、2004年12月よりシャトーレストラン『ジョエル・ロブション』エグゼクティブシェフに就任。2007年ミシュ ラン東京で3ツ星に、2015年まで9年連続で3ツ星を維持。2016年7月7日、『レストランNabeno-Ismナベノイズム』を開業。現在、ミシュラン2ツ星、ゴーミヨ17点4トック。辻調グループ校友会コンピトゥム副会長、クラブアトラス副会長、トックブランシュ東日本地区委員、クラブドュタスキドール理事。第12回農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」ブロンズ賞受賞。

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