30代半ば以降の、いわゆるミドル世代の女性がたびたび悩まされるのが、膝の痛みです。ただしその原因や症状は様々です。膝痛治療を受ける前に、今起きている痛みについて、その症状を特定するには、どうすればいいのでしょうか。佐藤医師は「まずは、思い当たる明確な要因があるかどうかを考えましょう」と教えてくれました。
「もしも要因が思い浮かぶ場合、それが外科的なものか、または内科的なものかをチェックして下さい」
「外科的要因で考えられるのが、事故やスポーツ外傷です。ただ事故については様々な状況が考えられるので、ここでは除外しましょう。外科的要因で多いのが、スポーツによる膝の痛み。具体的には『①半月板損傷』と『②靭帯損傷』などが考えられます」
「また内科的要因で考えられるのは『③血液や内臓の疾患によって生じる痛み』です。例えば膠原病によるリウマチの他、血友病やガンなどの疾患が膝の痛みの原因になっている可能性もあります」
では、これらの症状に対し、実際にどのような膝痛治療を進めていくのでしょうか。佐藤医師は続けます。
「①の半月板損傷の場合、損傷の程度によって治療法は変わります。半月板に少し傷がついている程度であれば、まずは保存療法。消炎鎮痛剤を使用したり、安静からリハビリの期間を経て、段階的に日常生活に戻ることができます。ただし断裂している場合は、手術を受けることが望ましいです」
「②の靱帯損傷。どの靱帯をどの程度損傷しているかによって、治療法は変わってきます」
ここで佐藤医師は膝の模型を手にとって、詳しく説明してくれました。
「膝には内側側副靭帯、外側側副靭帯、前十字靭帯、後十字靭帯の4つの靱帯があります。内側側副靭帯、外側側副靭帯の損傷に関しては、保存療法が一般的です。痛みに応じて膝関節を固定の後、サポーターなどの装具を使いながらリハビリを行っていきます。仮に断裂している場合でも、スポーツ選手や体を使うお仕事をされている方などの特殊な例以外は、手術をせずに治すケースが多いですね」
「前十字靭帯に関しては、基本的に手術を行います。大昔は手術をしない治療法もありましたが、術後にぐらつきが残って軟骨がすり減り、後ほどお話しする変形性膝関節症につながるリスクが高いため、今は手術をお勧めしています。後十字靭帯は保存療法を選択する場合が多いですが、ケースによっては手術を選択する場合もあります」
そして内科的要因の、「③疾患によって生じる痛み」に対する膝痛治療は、「まずは血液検査などで診断をはっきりさせること。その上で専門医に相談し、疾患の具体的な治療を進めていくことが大事です」。いずれにしても「痛みを感じたら早く医師の診断を受けてもらいたいですね」と、佐藤医師は言います。
では、明確な要因が思い浮かばない膝の痛み。多くの方がこれに当てはまるのではないでしょうか。これらは、どんな症状が考えられるのでしょう。
「まずひとつ目が『④下肢部分の筋力不足による痛み』です。例えば股関節回りなどの筋力や柔軟性が足りないことで、膝に過度な負担がかかり、痛みが生じるというものです。これに関してはリハビリ治療がメインになります。まずは全身の機能をチェックし、痛みの根源となっている箇所を究明。その部位の筋力や柔軟性を強化する運動療法を行っていきます」
そして、要因不明の膝の痛みで最も多く見られるのが「⑤変形性膝関節症の初期症状」です。佐藤医師が日々の診断の中で、「御自身が具体的な要因が思い当たらないという膝痛のうち7割8割がこれである」と体感されているそうです。
では、膝痛治療を考える多くの方、特にミドル以上の女性が悩まされている変形性膝関節症とは、どんな症状なのでしょう。そして、どのように膝痛治療を進めていくのか。次回は変形性膝関節症の実際の症状と痛みが起こるメカニズムについて、佐藤医師に詳しく伺っていきます。
(この項つづく)