「チャンスをつかむためには健康でいること」フレンチの鉄人・坂井宏行シェフが語る成功の秘訣【ウェルビーイングChefs】

シェフ / 坂井 宏行

2023-04-13

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日本のフランス料理の第一人者として知られるシェフ・坂井宏行氏。1980年、東京・南青山に「ラ・ロシェル」をオープンし、その後、レストランウェディングの先駆けとなり、ラ・ロシェルの支店などビジネスを拡大。今もなお料理人、経営者として幅広く活躍しています。2022年4月に80歳を迎えた今も、仕事はもちろん、プライベートでも精力的に活動。そのパワーの源、健康でいるための秘訣がどこにあるのかを伺いました。(聞き手・酒井明子)

ラ・ロシェルのオーナーシェフ坂井宏行氏。今も鉄人時代を知るファンが多く食事に訪れる。

目次

健康でいないとビジネスチャンスを逃す!

今年の春に80歳を迎えた、フレンチレストラン「ラ・ロシェル」のオーナーシェフ・坂井宏行氏。現在も同店のオーナーシェフとしてだけでなく、レストラン経営、講演会、そしてYouTubeでも積極的に活動を続けています。

そのパワフルさは仕事面だけでなく、もちろんプライベートでも発揮されています。人気テレビ番組『料理の鉄人』でおなじみの道場六三郎氏や陳建一氏とは今でも交流があり、3人の鉄人が揃ってゴルフに行くことも頻繁にあるそうです。

「私はじっとしていることが苦手なんです。今朝もスポーツジムに行き、筋トレやストレッチをしてきました。他にもジェットスキー、ロードバイク、パラグライダーなど、アクティブな趣味が多いですね」

「以前、ジェットスキーに乗るために特殊小型船舶操縦士免許を取得しました。最近でも沖縄に行くと、毎日のように乗っています。ロードバイクは店に来るときなど日常でも乗りますが、時間があるときは少し遠くに足を伸ばします。近年では福島まで150kmの距離を、9時間かけて走りましたよ。そのときはお尻パッドを忘れてしまい、サドルにバスタオルを巻いて完走しました(笑)」

「止まっていられない性分」の坂井シェフの趣味はジェットスキーなどアクティブ系。

とにかく体を動かすことが好きで、「マグロと同じですよ。泳いでないとね、止まっていられない性分なんです」と、坂井シェフは話します。健康でいること、丈夫な体を作ることを大切にしている根本には、料理人や経営者としての考えがありました。

「料理人は基本、立ち仕事でしょう。3~4時間立っていても大丈夫なくらいの体幹を、しっかりと鍛えておくことが大切です」

シェフの仕事は基本、立ち仕事。そのためにも体幹などトレーニングを欠かしたことはない。

「また心も体も健康でいないと、もしビジネスチャンスが訪れたときにつかむことができません。健康で自信があれば、『少し大変かも……』と思っても引き受けようという前向きな思考になります。そして、そうした難題を経験することで、さらに成長することができるのです。もし自分の心や体が万全な状態でないことでビジネスチャンスを逃したら、必ず後悔します。そのために僕は日頃から体を鍛えているのです」

運動とともに坂井シェフの健康を支えているのが食事です。80歳の今でも食事制限はほとんどありません。「お医者様にはあれこれ言われることもありますがね」と笑いながら、好きな肉料理をたくさん食べること。それが健康とストレス解消の秘訣だそうです。

歯の健康は脳の刺激につながる!

トレードマークの笑顔を見せる坂井シェフの口元から白い歯がのぞく。

体の健康と同様に、坂井シェフが若い頃から気を使っているのが歯の健康です。ホワイトニングやメンテナンスのために、歯科クリニックには年に2回は必ず通っているといいます。その結果、今もすべて自分自身の歯だと伺いました。これには驚きました。

「レストランではシェフとして、お客様のテーブルに挨拶に行くこともあります。そのときに汚い歯だと話もできないし、笑うこともできません。小さい頃からサトウキビを茎ごとかじるほど、歯が丈夫でしたからね。むし歯も昔からまったくありません」

「自分の歯でしっかり噛むということは、脳への刺激にもつながります。きちんと咀嚼ができないと、脳が退化していってしまうので、健康な歯をキープすることは生きていく上で大切なことだと感じています」

ちなみに坂井シェフの愛用品は、歯周病薬の「アセス」だそうです。30年以上前から使っていて、今も1日に4〜5回は歯を磨いているそうです。

生涯、コックコートを脱ぐことはない

シェフの代表的スペシャリテの「ラングスティーヌのクルージェット包みコキアージュソース」の仕上げにかかる。

いつもパワフルでアクティブな坂井シェフ。常に健康で、夢や希望があって、アクティブでいることが、年をとらない秘訣だと言います。そこで、今後の目標を聞いてみると……。

「朝、起きたときに、『今日はなにをすればいいかな…』と考えるようではダメ! 私はいつも『あれもしたい! これもしたい!』と思って目覚めます。常にやりたいことを持っていて、ワクワクしていたいですね」

「私ももう80歳なので、仕事では自分が先頭に立って店を仕切るという立場ではないと思っています。信頼のおけるスタッフに任せて、方向性だけを示す。信じて任せることも大切だと感じています」

「ただ、コックコートを脱ぐことは、生涯ないと思います。オファーがあり続ける限り、このコックコートを着て、色々な形で料理に関わっていきたいですね」

生涯現役を宣言する坂井シェフの凛とした立ち姿は全く年齢を感じさせない。

ビジネスの目標を伺ったあと、「ではプライベートの目標は?」と聞くと、シェフは第一声で、「月に行きたい!」とおっしゃいました。さらに「ロードバイクで日本一周をしたり、沖縄に移住して海を楽しむのもいいなぁ」と。健康な体を持つ鉄人は、どこまでもアクティブな夢を語っていました。

Text/Akiko Sakai Photos/Kazuya Furaku, La Rochelle

レストランデータ

店名/ラ・ロシェル南青山(公式サイト
住所/東京都港区南青山3-14-23
Tel/03-3478-5645
営業時間/ランチ・12:00~14:00(L.O.)、ディナー・18:00~20:30(L.O.)
定休日/月曜日、火曜日(祝日を除く)

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この記事を書いた人

フレンチレストラン「ラ・ロシェル」オーナーシェフ。1942年、鹿児島県出身。17歳でフランス料理の修業を始め、19歳で単身オーストラリアに渡り1年半の修行の後、帰国。都内のレストランにて修業を経た後、1980年、38歳で独立し、フランス料理店「ラ・ロシェル」をオープン。1994年からテレビ番組「料理の鉄人」にフレンチの鉄人として出演し、「完全なる料理の鉄人」では最強鉄人になる。以来、日本のフランス料理の第一人者として幅広い分野で活躍を続け、2005年にはフランス共和国より『農事功労章シュヴァリエ勲章』を受勲。2021年文化振興の功績を認められ、文化庁長官勲章受賞。現在、国内外でのイベントや調理師学校にて特別講師をつとめ、後進指導育成に力を入れている。

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